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十月廿三日の曉。すでに鎌倉をたちて都へおもむくに。宿の障子に書付。
なれぬれは都を急く今朝なれとさすかなこりのおしき宿哉
右東關紀行上木行于世之本稱鴨長明所著今據夫木抄所載從古本定爲源親行作比校已了
うたゝねの記
阿佛
もの思ふことのなぐさむにはあらねども。ねぬよの友とならひにける月の光待出ぬれば。例のつまどをしあけてたゞひとりみ出したる。あれたる庭の秋露。かこちがほなる虫のねも。物ごとに心をいたましむるつまと也ければ。心に亂れおつる泪ををさへて。とばかりこし方ゆくさきを思ひつゞくるに。さもあさましくはかなかりける契りの程をなどかくしも思ひいれけんと。我心のみぞかへす〴〵うらめしかける。夢現ともわきがたかりし宵のまより。關守の打ぬる程をだにいたくもたどらずなりにしや。打しきる夢のかよひ路は。一夜ばかりのとだえもあるまじきやうにならひにけるを。さるは月草のあだなる色をかねて。しらぬにしもあらざりしかど。いかにうつりいかに染ける心にか。さも打つけにあやにく