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群書類從卷第三百二十一


日記部二

紫式部日記

寬弘五年のけはひの立まゝに。土御門殿の有さまいはんかたなくおかし。池のわたりの梢とも。遣水の邊の草村。をのかしゝ色つき渡つゝ。大方の空もえんなるにもてはやされて。不斷の御讀經の聲々。哀まさりけり。やう凉しき風のけしきにも。例の絕せぬ水の音なん。夜もすから聞まかかよ榮はさる。御前にも近ふさふらふ人々。はかなき物語するをきこしめしつゝ。なやましうおはしますへかめるを。さりけなくもてかくさせ給へり。御有さまなとのいとさらなることなれと。浮世のなくさめには。かゝるおまへをこそ。たつねまいるへかりけれと。うつし心をは引たかへ。たとしへなくよろつわするゝにも。かつはあやしき。また夜深きほとの月さし曇木の下をくらきに御かうしまいりなはや。女官はいまたさふらはし。くら人まいれなといひしらふほとに。後夜の鐘うちおとろかし。五たんの御すほう時はしめつ。我も我もとうちあけたる伴僧の聲々。遠くちかくきゝ渡されたるほと。おとろしくたうとし。觀音院の僧正餘慶。ひんかしのたいより。廿人の伴僧をひきゐて御かち參り給ふ。あし音。渡殿のはしのとゝろとふみならさるゝさへそ