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なゝきいでたるは。春秋もみなわすれぬかしといひつゞけて。いづれにか御心とどまるととふに。秋の夜に心をよせてこたへ給を。さのみおなじさまにはいはじとて。

 あさ綠花もひとつにかすみつゝおほろにみゆる春の夜の月

とこたへたれば。返すうちずんじて。さは秋の夜はおぼしすてつるなゝりな。

 今宵より後の命のもしもあらはさは春の夜を形見と思はん

といふに。秋にこゝろよせたる人。

 人はみな春に心なよせつめりわれのみやみん秋の夜の月

とあるに。いみじうけうじおもひわづらひけるけしきにて。もろこしなどにもむかしより春秋のさだめはえし侍らざなるを。このかうおぼしわかせ給ひけん御心ども。おもふにゆへ侍らんかし。わが心のなびき。そのおりのあはれともおかしともおもふ事の有時。やがてその折の空のけしきも月も花も。心にそめらるゝにこそあべかめれ。春秋をしらせたまひけんことのふしなむいみじううけたまはらまほしき。ふゆの夜の月はむかしよりすさまじきもののためしにひかれて侍けるに。またいとさむくなどして。ことにみられざりしを。齋宮の御もぎのちよくしにてくだりしに。あかつきにのぼらむとて。ひごろ降つみたる雪に月のいとあかきに。旅の空とさへおもへば心ぼそくおぼゆるに。まかり申にまいりたれば。よの所にもにず。おもひなしさへけおそろしきに。さべきところにめして。圓融院の御世よりまいりたりける人のいといみじく神さびふるめいたるけはひのいとよしふかく。昔[のイ]ふるごとも[どもイ]いひいで。うちなきなどして。ようしらべたるびはの御ことをさしいでられたりしは。この世のことともおぼへず。夜のあけなんもおしう。京のことも思ひたえぬばかり萬壽二年廿一日齋宮御着裳勅使藏人右兵衞佐資通進發來月五日着裳云々おぼ