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に。いみじう人なれつゝ。かたはらに打ふしたり。尋ぬる人やはと是をかくしてかふに。すべて下すのあたりにもよらず。つとまへにのみありて。ものもきたなげなるはほかざまにかほをむけてくはず。あねおとゝの中につとまとはれて。おかしがりらうたがるほどに。あねのなやむ事あるに。物さわがしくて。此ねこをきたおもてにのみあらせてよばねば。かしがましくなきのゝしれども。なをさるにてこそはとおもひてあるに。わづらふあねおどろきて。いづら。猫はこちゐてことあるをなどととへば。夢に此ねこのかたはらにきて。おのれはじじうの大納言殿の御むすめのかくなりたる也。さるべきえんのいさゝかありてこの中の君のすゞろにあはれとおもひ出たまへば。ただしばしこゝにあるを。此ごろ下すのなかにありて。いみじうわびしきことといひて。いみじうなくさまは。あてにおかしげなる人と見えて。打おどろきたれば。此ねこの聲にて有つるが。いみじく哀成なり
契けんむかしのけふのゆかしさに天の川なみ打出つる哉
返し。