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との給はせたれは。

 おつるなみたは雨とこそふれ

御氣しきのれいよりもうかひたる事ともをの給はせて。明ぬれはおはしましぬ。なにのたのもしけなき事なれと。つれもなくさめにおもひたちつることを。さらはいかにせましなとおもひみたれて聞ゆ。

 現にて思へはいはんかたもなし今宵のことを夢になさはや

と思たまふれと。いかてかはとて。はしに。

 しかはかり契りし物を定なきさはよの常におもひなせとや

くちおしくもやとあれは。御覽して。これよりこそまつとおもひつれと。

 現とは思はさらなんねぬるよの夢に見えつるうき事ともを

思ひなさなん。あな心みしかや。

 ほとしらぬ命計そさためなき契しことは住の江のまつ

あかきみや。さらにあらまし事にきこえし。人やりならぬ物わひしとそある。女はそのゝちもあはれにおほえて。なけきのみせらる。とくとていそきたちたゝましかはとおもふひるつかた。ある御文をみれは。

 古今あな戀しいまも見てしか山賤の垣ほにおふるやまと撫子

とそある。あな物くるしとうちいはれて御返。

 伊勢物語戀しくはきてもみよかし千早振神のいさむる道ならなくに

と申たれは。うちほゝゑませ給て御らんす。この比は御經ならはせ給けれは。

 あふみちは神の諫にあらねとも法の蓬にをれはたゝぬそ

御返し。

 われさらは進みてゆかん君はたゝ法の筵をひろむはかりそ

なと聞[え歟]させつゝすくす。雪いたうふる日。ものゝ枝にふりかゝりたるにつけて。

 雪ふれは木々の木のはも春ならてをしなへ梅の花そ咲ける

なとの給はせたるに。おとろきなから。

 梅は早咲にけりとておれはちる花とそ雪のふるは見えける

又の日。またつとめて。