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群書類從卷第三百二十七


紀行部一

土左日記

木工權頭貫之


をとこもすなる[といふイ]日記といふものを。をむなもして[こゝろみイ]んとてするなり。それのとし[のイナシ]しはすのはつかあまり。ひとひのいぬのときにかどです。そのよしいさゝかものにかきつく。ある人あがたのよとせいつとせはてゝ。れいのことゞもみなしをへて。げゆ粥由などとりて。すむたちよりいでて。ふねにのるべきところへわたる。かれこれしるしらぬおくりす。としごろよくぐしつる人どもイなんわかれがたくおもひて。その日しきりにとかくしつゝのゝしるうちに夜ふけぬ。

廿二日に。いづみの國までと。たひらかに願たつ。ふぢ原のときざね。ふなぢなれどむまのはなむけす。かみなかしも[かみしなかもイ]ながら。ゑひすぎ[あきイ]ていとあやしく。しほうみのほとりにてあざれあへり。

廿三日。やきのやすのりといふ人あり。この人イにかならずしもいひつかふものにもあら[ずイ]なり。これぞたゞはしきやうにてむまのはなむけしたる。かみがらにやあらん。くに人の心のつねとして。いまはとて見え[ずイ]なるを。心あるものははぢずぞなんきける。これはものによりてほむるにしもあらず。