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あふみちはわすれぬめりとみし程に關打越てとふ人はたれ
いつかはとの給はせたるは。おほろけに思たまへていりしかはとて。
山なからうみはこくとも都へはなにか打出の濱をみるへき
と聞えたる。御覽して。くるしうともまたいけとて給はせたり。とふ人とかあれは。あさましの御ものいひやとて。
尋ゆく逢坂山のかひもなくおほめくはかりわするへしやは
まことや。
うきによりひたやこもりと思ふとも近江の海は打出て見よ
うきたひことにとこそいふなれとの給はせたれは。たゝかく。
關山のせきともあられぬなみたこそ近江の海と流いつらめ
とて。はしに。
心みにをのが心もこゝろみむいさ都へときてさそひ見ん
とあり。思ひもかけぬに。いくものにもかなとおほせといかゝは。かゝるほとに出にけり。さそひ見よとありしかと。いそき出給にけれはなんとて。
あさましやのりの山ちに入そめて都へいさと誰さそひけん
御返にはたゝ。
山をいてゝくらき道にそたとりにし今一度のあふことにより
つこもりかたに。風いたう吹て野分たちて。雨なとふるに。つねよりも物こゝろほそうなかむるに。れいの御文あり。折しりかほにの給はせたるに。日ころのつみもゆるし聞えつへし。
なけきつゝ秋のみ空を詠れは雲うちさはき風そはけしき
かへり事。
秋風はけしきふくたに戀しきにかき曇る日はいふ方そなき
けにさそあらんかしと思せと。れいのほとへぬ。九月十よ日はかりの有明の月に御目さまして。いみしくひさしうも成にけるかな。あはれこの月はみるらんかしと思せは。例のわらは計を御ともにておはしまして。かとをたゝ