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かくて二三日有て。夕まくれに。思もかけぬに。にはかに御車をひきいれておりさせ給。ひるはまた見えまいらせねは。いとはつかしうおもへと。せむかたなうなることなとの給はせて歸らせ給ぬ。そののち日比に成ぬるに。いとおほつかなきまてをともし給はねは。をんな。

 徙然と秋の日比のふるまゝに思ひしらせぬあやしかりしも

むへ人はと聞えたりけれは。このほとにおほつかなく成にけれと。されと。

 人はいさわれはわすれす日をふれと秋の夕暮ありしあふこと

との給はせたり。あはれにはかなく。賴む人もあらす。かやうのはかなしことにて。世中を慰めてあるも。うちおもへはあさましう。かゝる程に八月にも成ぬれは。つれ慰めんとて。いし山に詣てゝ。七日計あらんと思ひてまうてぬ。宮久しうも成ぬるかなとおほして。御文つかはすに。童一日まかりてさふらひしかと。石山になむ。此比はおはしますなると申さすれは。さはけふは暮ぬ。つとめてまかれとて。御文かゝせ給たまはりて石山にきたり。佛の御前にはあらて。故鄕のみ戀しくて。かゝるありきもひきかへたるみの有樣と思ふにいともの悲しうてまめやかに佛を念し奉りてある程に。かうら高欄のしもの方に人のけはひのすれは。あやしうて見おろしたれは。この童なりけり。あはれに思ひかけぬ所にきたれは。なそととはすれは。御文をさし出たるも。例よりもふとひきあけられて見れはいと心深く入給ふにけるをなん。なとかかくともの給はさらん。絆まてこそ思されさらめ。をくらし給に心うきとて。

 關越てけふそとふとや人はしる思ひたえせぬこゝろ遣ひを

いつか出給はんとするとあり。ちかうてたにおほつかなくものし給ふに。かくわさとたつね給つらんよとおかしうおほへて。