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たすけにとて。片時の程とてくだしゝを。そこの年比そこらのこがねたまひて。みをかへたるがごと[くイ]なりにけり。かぐや姬はつみをつくり給へりければ。かくいやしきをの[れイ]がもとにしばしおはしつる也。つみの限はてぬればかくむかふるを翁はなきなげく。あたはぬ事也。はやいだかへイし奉れと云。翁こたへて申。かぐや姬を養奉る事廿餘年に成ぬ。かた時との給ふにあやしくなり侍りぬ。又こと所にかぐや姬と申人ぞおはしますらんと云。爱におはするかぐや姬はおもき病をしたまへばえいでおはすまじと申せば。その返事はなくて。屋のうへにとぶ車よせて。いざかぐや姬。きたなき所にいかでか久しくおはせむと云。たてこめたる所の戶則たゞあきにあきぬ。かうしどもも人はなくしてあきぬ。女いだきてゐたるかぐや姬とに出ぬ。えとゞむまじければ。たゞさしあふぎてなきをり。竹取心まどひてなきふせる所によりて。かぐや姬云。こゝにも心にもあらでかくまかりのぼらんをだに見をくり給へといへども。なにしに悲しきにみ送りたてまつらむ。我をばいかにせよとて捨てはのぼり給ふぞ。ぐしてゐておはせねと啼てふせれば。御心まどひぬ。ふみをかき置てまからむ。戀しからん折々とり出てみ給へとて打なきてかく。ことばは。この國にむまれぬるとならば。なげかせ奉らぬほどまで侍らですぎ別ぬイるこそかへすがへすほいなくこそおぼえ侍れ。ぬぎをくきぬをかたみとみ給へ。月の出たらむ夜は見をこせ給へ。見すて奉りてまかる。そらよりもおちぬべき心ちするとかきをく。天人のなかにもたせたるはこあり。天の羽衣いれり。また有はふしの藥入り。ひとりの天人いふ。つぼなる御藥たてまつれ。きたなき所の物きこしめした