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は。そめどのの后なり。

むかし男。つのくににしるところありけり。あにをとゝともだちなんどひきゐて。なにはのかたにいきけり。なぎさをうち見ければ。船どものあるを。

 難波津に一本けふこそみつの浦ことに是や此よをうみわたる舟

これをあはれがりて。人々かへりにけり。

昔男。いづみの國にいきけり。つの國住よしのこほりすみよしの里のはまゆくに。いとおもしろければおりゐつゝ。ある人すみよしのはまとよめといふに。

 鴈なきて菊の花さく秋はあれと春は海へに住吉の濱

とよめりければ。みな人よまずなりにけり。

昔男有けり。その男伊勢の國にかりのつかひにいきけるを。かの伊勢の齋宮なりける人のおや。つねの使よりは此人よくいたはれといひやりけり。おやのいふことなりければ。いとねんごろにいたはりけり。あしたにはかりにいだしたてゝやり。ゆふさりはこゝにかへりこさせけり。かくてねんごろにいたはりけるほどに。いひつぎにけり。二日といふ夜われてあはむといふ。女はたいとあはじとも思へらず。されど人めしげければえあはず。つかひさねとある人なれば。とをくもやどさず。ねやちかくなん有ける。女人をしづめて。ねひとつばかりに男のもとにきにけり。男はたねられざりければ。とのかたを見いだしてふせるに。月のおぼろなるに人のかげするを見れば。ちいさきわらはをさきにたてゝ人たてり。おとこいとうれしくて。わがぬる所にゐていりて。ねひとつよりうしみつまで物かたらひけり。いまだなにごともかたらひあへぬほどに。女かへりにければ。男いとかなしくてねず成にけり。つとめてゆかし[いぶかしイ]けれど我人をやるべきに