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るに。くつはとりておくになげいれてのぼりゐて。かくかたはにしつゝありわたるよ。身もいたづらになりぬべければ。つゐにほろびぬべしとて。この男いかにせん。わかゝる[がかゝるイ]心やめ給へと。ほとけ神にも申けれど。いやまさりつゝおぼえつゝ。なをわりなくこひしきことのみおぼえければ。かんなぎをんやうじして。こひせじといふみそぎのぐしてなんいきける。はらへけるまゝにいとゞかなしきことのみかずまさりて。ありしよりけに戀しくのみおぼえければ。

 戀せしとみたらし河にせしみそき神はうけすも成にける哉けらしも古今

といひてなんきにける。

このみかどは。御かほかたちよくおはしまして。曉には佛の御名を心にいれて。御聲はいとたうとくて申給ふを聞て。此女はいたうなげきけり。かゝる君につかうまつらで。すぐせつたなうかなしきこと。此男にほだされてと思ひてなんなきける。かゝるほどに。みかどきこしめしつけて。此男ながしつかはしければ。あの女をば。いとこの宮す所まかでさせて。とののくらにこめてしほり給ひければ。くらにこもりて。なく

 蜑のかるもにすむ虫の我からとねを社なかめ世をは恨みし

となきをれば。此男は人の國より夜ごとにきつゝ。笛いとおもしろくふきて。聲はいとおかしくてうたをぞうたひける。此女くらにこもりながら。そこにぞあなりとはきゝけれど。逢見るべきにもあらで。かくなん。

 さり共と思ふらん社悲しけれ有にもあらぬ身をはしらすて

とおもひをり。おとこは女しあはねば。かくしありきつゝうたふ。

 徒に行てはかへる物ゆへに見まくほしさにいさなはれつゝ

水のおの御時の事ニ條のきさきともこのことは一本なるべし。おほみやす所と