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むかしおとこ。
いかてか
むかしおとこ。つれなかりける女に。いひやりけり。
行やらぬ夢路をたとる袂にはあまつそらなき露やをくらん
昔男。ふして思ひおきておもひあまりて。
我袖は草の庵にあらねともくるれは露のやとりとそなる
昔。人しれぬ物おもひける男。つれなき女のもとに。
戀わひぬ蜑のかるもに宿るてふ我か
昔。心つきな
あれにけりあはれ幾よの宿なれや住けん人のをとつれもせす
といひて。あつまりきければ。男。
葎生て荒たる宿のうれたきはかりにも
といひてなむ出したりける。此女どもほひろはんといひければ。
打わひて落穗拾ふときかませは我も田つらにゆかまし物を
昔男有けり。宮づかへもいそがしくて。心もまめならざりければ。家とうじ
さ月まつ花橘の香をかけは昔の人の袖のかそする
といへりけるにぞ。思ひ出てあまになりて。山