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別紙㈠ 請求金額明細表

原告名 拘禁中の逸失利益 慰 謝 料 刑事裁判
費  用
亡〔丁2〕の損
害賠償請求
権の相続分
刑事補償法により
補償を受けた金員
弁護士費用 請求金合計額
三四二四万二七〇〇円 二〇〇〇万円 六〇〇万円 一〇〇万円 一三九九万六八〇〇円 四七〇万円 五一九四万五九〇〇円
と み 五〇〇万円 四五〇万円 九五万円 一〇四五万円
〔丁6〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円
〔丁4〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円
〔丁3〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円
〔丁7〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円
〔丁〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円
〔丁5〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円
〔丁8〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円
〔丁9〕 三〇〇万円 一〇〇万円 四〇万円 四四〇万円

総合計九七五九万五九〇〇円


㈡ 慰謝料

 《証拠略》に前記一説示の事実を総合すれば、原告隆は、起訴当時二六歳の青年であったが、無実でありながら、検察官の過失に基づく違法な公訴の提起、追行により、殺人罪という重大な犯罪で被告人の座に立たされたうえ、変態性欲者との汚名まで着せられ、原一審においては極刑の求刑をされて無罪の判決を得たものの、原審において懲役一五年の判決を宣告され、約一〇年間もの長い間受刑者として服役したうえ、仮出獄後も再審において無罪判決が確定するまでさらに一四年以上も殺人犯としてひっそくした社会生活を余儀なくされ、さらに捜査、公判を通じ終始一貫して無実を訴え、服役中も無実を晴らしたい一心から、なんとか再審請求ができないものかと日夜思い悩んだ挙句、これを実現すべく、家族らとの間でその旨の文通を繰り返していたばかりでなく、その間、原二審判決において訴訟費用の負担を命ぜられたので、その免除の申立てをするも認められず、かえって、服役中毎月のように訴訟費用の納付を督促され、これを拒み続けてきたが、出所後就職するに際し、就職先に訴訟費用納付命令書が送達されることを慮って、やむなくこれを支払い、また服役中体をこわし、出所後約一年間通院生活を余儀なくされたこと、以上のような服役及び出所後の療養生活のため、同人が結婚したのは四〇歳を過ぎてからであること、本件公訴提起以来再審において無罪が確定するまで、原告隆は勿論、その家族らも社会生活において世間から数々のいやがらせを受け、勤務先でも不利益な扱いを受けたこと、那須家は、那須与一の直系の子孫にあたり、源頼朝公から賜った白旗、那須与一宗隆の太刀(昭和一〇年に文部省から重要美術品としての指定を受けている。)、那須家系図、甲冑、陣羽織、持小旗、宇都宮俊綱の旗、那須家の家紋入りの古旗など多数の古文書、武具等が家宝として保存され、その一部はかつて秩父宮殿下の台覧に供されたこともあるほどの由緒ある家柄であったが、原告隆の裁判費用等にあてるため、これらの家宝の一部を売却し、さらに当時住んでいた弘前市在府町の家屋敷をも売却するなど、一族の名誉を著しく傷つけられたことが認められる。かてて加えて、原告隆は、起訴以来再審で無実の罪を晴らすまで実に二七年以上を要し、この間二〇歳代後半から三〇歳代にかけて人生の最も有意義な時期を無実の罪により刑務所の中で過すことを強制され、これによって直接、間接に受けた肉体的苦痛は言うに及ばず、自由を奪われたことにより被った無念、悔しさなどは、その立場におかれた者でなければ到底理解することができないものであって、その精神的苦痛は計り知れないものがあるといっても決して過言ではない。これらの事情に後記のとおり、再審請求からその開始決定に至るまでに裁判費用として相当額の支出を要したものと推測されること、逸失利益の算定にあたっては、原則として、その当時の得べかりし収入額を基礎として計算せざるを得ないが、昭和二四年以降約三〇年間に大幅な貨幣価値の変動があったため、当時の収入額を基礎として算定した場合、その金額は著しく低額とならざるをえず、したがって、その額を補償しただけでは、被害者の被った損害を塡補することにより損害の公平な分担を図るという国家賠償法の趣旨を全うしえないこと、本件においては得べかりし収入を本訴提起当時まで運用すれば得られたであろう利益(原告らは遅延損害金の始期を訴状送達の翌日としたため)が考慮されないことなどの諸点をも斟酌すれば、原告隆の被った精神的苦痛を慰謝する金額としては金二〇〇〇万円をもって相当とすべきである

=====㈢ 再審請求後再審開始決定に至るまで