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萬の士族に限られたるものにして、其上には武家貴族の大名あり、宮庭貴族の公家あり。高貴安逸なる大名の輩は、唯だ僅に其名籍を武門に列するに過ぎず。さむらひの下級には、大多數の平民あり、農、工、商に分れて、平和の業務に服役す。さればハーバート、スペンサーの所謂武力社會の特色とは、即ち士族の階級に於てのみ之を見るを得たりと云ふべく、又た其の實業的社會の特色と稱するものゝ、此れが上下の階級に適用するを得べきは、即ち婦人の地位の之を明かにするものあり。女子の自由の拘束せられたるは、士族の間に於て最も甚だしとす。然るに奇觀なるは、社會の階級を降るに從ひ、例へば卑賤なる職工の間の如きに至りては、夫婦の地位頗る均等に近きものありき。又た高貴なるこ