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心以て讐を復することの、能く社會の秩序を保持したるなりき。神話のオシリスはホーラスに問ふに『此世の最も美しきは何ぞ』と。答へて曰く、『父の仇を報ずる是れなり』と。而して日本人は之に加ふるに、必ずや、『君主の仇』の語を以てせんとするものなり。

 復讐は、之によりて、自己が正義の念を滿足せしむるものなり。復讐者の理由とする所は曰く、『我父は善人なり、非命に斃るべき者に非らず。然るに我仇は、我父を殺すの大虐を行へり。我父若し在らんには、必ずや此暴虐を看過せざるべし。昊天は惡德を憎む。惡人を亡ぼすは、我父の欲する所にして、又た天意なり。我仇は我手に死すべし。彼は我父の血を流したるが故に、父の血肉たる我は、亦た敵人