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季弟に向ひて、『八麿より先づ腹切れよ、切損じ無きやう見届けくれんぞ』と云ふ。稚きは答へて、ついぞ切腹を見たることのあらねば、兄の爲さんやうを見て、己れも亦た之れに倣はんと云へば、二人の兄は、淚ながらに微笑を湛へ、『いみじくも申したり。健氣の稚兒や、父の子たるに耻ぢず』とて、二人が間に八麿を坐らせつ、左近は左の腹に刀を突き立てゝ、『弟、之を見よや、會得せしか、あまりに深く搔くな、仰向に倒れんぞ。俯伏して膝をくづすな』。內記も亦た腹搔切りながら、弟に、『目を刮と開けや、さらずば死顏の女にまがふべきぞ。切尖淀むとも、また力撓むとも、更に勇氣を鼓して引き廻せや』。八麿は兄の爲すやうを見、兩人の共に息絕ゆるや、徐かに肌を脫ぎて、左右より敎へられたるが如く、