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さあれ、香しき名は、
死すとも我が墓に生くれば、
君が暗く汚れし業の爲とて、
などか御心に任すべき。

 我が良心をも犧牲として、尙ほ君主の恣意、妄心、邪僻を助くる者は、武士道の曾て齒せざる所にして、此輩を卑しめて、諂諛の侫臣となし、又た賤劣なる面從を事として君寵を私するの嬖臣となす。この二種の臣は、正にイアゴーが云へる如くに、一は我が身を繫ぐ頸の綱を押し戴き、主が厩の驢馬同然、むざ一生を仇に過ごす、正直な、はひつくばひの愚者なり。他は又た、陽に忠義らしき、身振業體を作りたて、心の底では、我身の爲ばかりを圖る者なり。臣下忠節の道