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したるに非ずや。ソクラテスや、生きては其良心に從ひ、死しては其國に仕へたり。吁嗟、國家の威權徒らに肆大にして、其民に强ふるに、各自が良心の指命をも尙ほ擧げて之に捧ぐべしと命令せん其日こそ悲しけれ。

 武士道は、人の良心を以て君主の奴隷たらしむることを誨へず。トマス、モーブレーは、誠に能く吾人の衷情を語るものなり。

畏しや我大君、
君のみもとに此身を捧ぐ。
臣が生命は仰せのまゝなり。
唯だ我が廉耻は然らず。

生命を奉ずるは臣の道なり。