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第八章 名譽

 名譽の念には、人の威嚴價値に關する明白なる自覺の存するが故に、此念は彼の生れながらにして、己が門地に伴ふ義務と權限とを重んずることを知り、且又た此れが敎養を受けたる武士の特質たらずんばあらず。『名譽』とは現時の通語にして、往時多くは同義を現すに、『名』、『面目』、『外聞』等の語を以てしたりき。此等の文字は各〻人をして、聖書の『ネーム』(名)、希臘語の假面なる字より出でたる『ペルソナリチー』(人格)、又たは『フエーム』(名聞)を想起せしむるものあり。令名は人の體面なり、我に備はれる不滅のものなり。