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ならびて、果報めでたく候ものは候まじ、但御身にかけたること二つ候、一つには御足本きたなげなるは、錦をきてあしにどろを付たるがごとし、二つには鳥といつぱ、高く飛を以て其德とす、御邊は飛ぶといへども遠くゆかず、是を思へば、つばさは鳥にして其身はけだものにてあん成ぞ、少き德にほこりて、大成そんをばわきまへずやとぞ、恥をしめしける、それよりして、孔雀わづかにとびあがるといへ共、此事を思ふ時は、つばさよはりて勢なし、其如く、人として我ほまれをさゝぐる時は、人のにくみをかうぶりて、はてにはあやまりをいひ出さるゝもの也、がまんの人たりといへ共、道理を以て其身をいさめば、用ざるかほをするといふとも、心には實もと思ひて、聊へりくだるこゝろあるべし、

第二十一 人をねたむと云事

ある御門、二人の人をめしいだし給ふこと有、一人は慾心ふかき者也、今一人はねたむ心深き者也、御門二人の者に仰けるは、汝等我等にいか成ことをも望申せ、後に望ん者には、前の望に一倍をあたへんとのたまへば、慾心成者は、何事にてもあれ、一倍とらんと思ふによつて、初にこひ奉らず、今一人の者は、何事にてもあれ、人をそねむ者なるによつて、我にまさりて彼にとられんもねたましやと思けん、是も初にこひ奉らず、われ先せよ人先せよと、いどみあらそふほどに時刻うつりければ、とくと綸言ならせ給ほどに、彼佞人思ふやう、こゝなるやつめが、餘に慾心深ことのねたましければ、彼にあだを望まんとて、すゝみ出て申けるは、然らばわれかたの眼をぬきたく侍ると奏しければ、安き所望とて、かた目をぬかれぬ、其如く、ねい人と云者は、人の榮ることをみては、かなしむがほにて內心にはよろこぶ物也、されば彼者、をのれがかた目をぬかるゝといへ共、兩眼をぬかん爲、先苦を堪忍せんとするにや、此ねい人を上覽有て、帝これをあはれみ給ひ、今一人は恙なくてぞ罷歸る、人にをしかけんと思ふは、先我身の苦と見えたり、血を含て人にはけば、まづその口けがるゝとこそつたへけれ、

第二十二 かいると牛との事

ある川の邊に牛一疋、こゝかしこゑじきをもとめ行侍りしに、蛙是を見て心に思ふ樣、わが身をふくらし