のと云者も、ふるひわなゝくとぞ見えける、然らずばなんぞ速に、敵こゝを亡ざる、腰ぬけの
第十八 おとこ二女をもつ事
ある男二人妻を持けり、獨はとしたけ、一人は若し、或時此男、老たる女の本に行時、其女申けるは、われとしたけよはひおとろへて、若男にかたらふなどと、人のあざけるべきもはづかしければ、御邊のびんひげ黑きをぬいて、しらがばかりを殘すべしとて、忽黑きをぬいて白きを殘せり、此男あなうしと思へ共、恩愛にほだされて、いたきをも顧ずぬかれにけり、また或時、若女の本に行けるに、此女申けるは、我盛成者の身として、御邊の樣に白髮とならせ給ふ人を、妻とかたらひけるを、世に男のなきかなんどと、人の笑んもはづかしければ、御邊のびんのひげの白きをぬかんと云て、是をこと〴〵くぬき捨る、されば此男、あなたに候へばぬかれ、こなたにてはぬかれて、あげくにはびんひげなふてぞゐたりける、其ごとく、君子たらん者、ゆへなき
第十九 かざみの事
あるかざみ、あまた子を持ける也、其子己れがくせに、よこばしりする處を、母これをみていさめて云、汝等何とて橫樣には走けるぞと申ければ、子共謹で承、一人のくせにてもなし、我等兄弟皆かくのごとし、然らば母上ありき給へ、それを學奉らんと云ければ、さらばとて先にありきけるを見れば、我橫ばしりに少もたがはず、子共笑て申けるは、我ら橫にありき候が、母上の行給ふはたてありきかそばありきかと笑ければ、詞なふして居たりける、其ごとく、我身のくせをばかへり見ず、人の過をば云物也、若左樣に人の笑はん時は、退て人の是非を見るべきにや、
第二十 孔雀と鶴の事
あるとき、鶴、孔雀とじゆんじゆくして遊けるに、くじやく我身をほめて申けるは、世中に我つばさに似たるはあらじ、繪に書共及がたし、光は玉にもまさりつべしなどとほこりければ、鶴答云、御邊のじまん、尤もよぎせぬ事にて候、空をかける物の中に、御邊に