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に、鼠あまたさしつどひ、遊びたはぶれけるほどに、ふしたるしゝ王の上に、鼠一つとびあがりぬ、其時しゝ王目ざめをどろき、此鼠を取てひつさげ、すでに打ちくだかんとしけるが、しゝ王心におもふ樣、是ほどのものを失ひたればとて、如何ほどの事のあるべきやと云て助侍りき、鼠命をひろひ、更に我等たくみける事に侍らず、餘りに遊たはぶれけるほどに、實のけがにて侍ると、彼しゝ王を禮拜して去ぬ、其後しゝ王有所にてわなにかゝり、旣に難儀に及ける時、鼠此よしをきゝて、いそぎしゝ王の前にはせ參、いかにしゝ王聞召せ、いつぞや我等をたすけ給ふ御恩に、又助侍らんとて、彼わなの端々を喰切、しゝわうをすくひてけり、其ごとく、あやしのもの成共、したしくなつけ侍らんに、いかでか其德を得ざらん、只威勢あればとて、凡下ぼんげの者をいやしむべからず、

第二十四 つばめと諸鳥の事

ある所に、燕と萬の鳥と集居けるほどに、つばめ申樣、こゝに麻といふものまく處有、各々是を引すて給へかしと歎きけれ共、諸鳥是にくみせぬのみならず、かへつてつばめをあざける、つばめ申は、御邊達は何を笑ひ給ぞ、此あさと申は、と云物になん成て、わなぞかづらぞとて、我等がためには大敵也、各は後日のわざはひを知給はずと申ければ、諸鳥共用心せず、其時つばめ申樣、所詮御邊達と、向後くみする事有べからずとて、諸鳥に替て、つばめ人の內に巢をくふ事、是や初にて有ける、其如く、あまたの人の中に、秀てよき道をしめすといへ共、用ずばまいてふところにす、又いかに人同やうに惡しといふとも、その味を嘗め試みよ、智者のいふことなにかはあしかるべきや、

第二十五 かはづが主君をのぞむ事

あてえるすと云ふ所に、彼主君なくて、何事も心にまかせなん有ける、其所は人あまりに誇けるに、主人を定ばやなどと議定ぎでうして、すでに主人をぞ定めける、故にいさゝかの僻事あれば、其人罪科に行ふ、是によつて里の人々主君を定けるを、悔悲め共かひなし、其比いそほ其所に至りぬ、所の人々此ことを語るに、其よし惡をばいはず、たとへを述て云、昔或川にあまたの蛙集居て、我主人を定ばやと議定し侍りき、尤しかるべしとて各天にあふぎ、我主人をあたへ給へとて祈誓す、天道是をあはれんで、柱を一つ給はりけり、其はしら