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人と友なへば、いたづがはしきことのみ有て、其德一もなき物也、

第十五 日輪と盜人の事

あるとき、ぬす人一人ありける、其所の人、かれに妻をあたへんと云、去ながら、學者の本に行て是を伺ふに、學者たとへを出て云、されば人間天道にあふぎ申けるは、日輪妻を持給はぬ樣にはからひ給へと云、天道いかにととひ給へば、人間答云、日輪たゞ一ましますさへ、炎天の比はあつきを忍び難し、しかのみならず、其時は五こくをてりそこなふ、もし妻子けんぞくはん昌せば、いかゞし奉らんと云、其ごとく、盜人一有だに、物騷がしく喧すしきに、妻をあたへ子孫はん昌せんこといかゞとのたまへば、實もとぞ人々申ける、其ごとく、惡人には力をそゆる事、雪に霜をそゆるがごとし、あだをば恩にて報ずるなれば、あく人には其力をおとさすること、かれが爲にはよき助たるべし、

第十六 鶴とおほかみの事

あるとき、狼咽に大き成骨をたて、難儀に及びける折節、鶴此よしを見て、御邊は何をかなしみたまふぞと云、狼鳴々申けるは、わが咽に大き成ほねをたて侍り、是をば御邊ならでは救ひ給ふ人なし、ひたすらたのみ奉ると云ひければ、鶴件の口ばしをのべ、狼の口をあけ、ほねをくはへてえいやと引出せば、其時つる狼に申けるは、今よりのち此報恩によつて、したしく申かたるべしといひければ、狼いかつて云樣、なんでう汝が何ほどの恩を見せけるぞや、汝が首をふつと喰いきらんこと、今某が心に有しを、たすけ置こそ、汝がためには報恩也と云ければ、鶴力に及ばず立さりぬ、其如く、惡人にたいして能事を敎といへども、かへつてそのつみをなせり、しかりといへ共、人にたいして能事をしへん時は、天道に對し奉て御ほうこうとおもふべし、

第十七 獅子王と驢の事

あるしゝわうとほりける處を、ろば是をあざける、しゝわう此よしを聞て、あつぱれ喰殺してんやといかりけるが、しばしとてゆるす心出來にける、其故はわれとひとしき物にもあらば、其あらそひもをよび侍べけれ共、かれらごとき宿世すくせ拙きものを、あたら口をけがさんことも、さすがなればとて免るし侍りき、其如く、