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第二十二 かいると牛との事

第二十三 童子とぬす人との事

第二十四 修行者の事

第二十五 鷄こがねのかいごをうむ事

第二十六 猿と犬との事

第二十七 かはらけ慢氣をおこす事

第二十八 鳩と狐との事

第二十九 出家とゑのこの事

第三十 人の心さだまらぬ事

第三十一 鳥、人に敎化をなす事

第三十二 鶴と狐の事

第三十三 二人よきなかの事

第三十四 出家とぬす人の事

伊曾保物語目錄


伊曾保物語上

第一 本國の事

さる程に、えうらうぱのうち、ひりしやの國とろやといふ所に、あもにやと云里有、其さとに伊曾保と云人ありけり、其ぢだひ、えうらうぱの國中に、か程見にくき人なし、その故は、頭はつねの頭に二つかさ有、まなこの玉つはぐみ出で、其さき平か也、顏かたち色黑く、兩の頰なだれ、くびゆがみ、せいひくゝ、あしながくしてふとし、せなかゞまり、腹ふくれ出てまがり、物云事おもしろき也、其時代、此伊曾保、人にすぐれてみぐるしくきたなき人也、されども才氣またならぶ人なし、されば其里にたゝかひおこりて、他國の軍勢みだれ入、いそほをからめ取て、はるかのよそへ聞えける、あてゑるすと云國の、ありしてすと云人にうれり、彼のものゝすがたの見ぐるしきを見て、なすべきわざなければとて、わが領地につかはし、百性にひとしく、牛馬を飼しむるわざをなんおこなふ、かくて年經ぬれど、さるべき人ともしらずなん侍りける、折