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しもの、此土の外には、黑子ばかりの地もあらず、さらば、此土の萬國にこえすぐれしは、我また多言を費やすにおよぶべからず、次に、我法今は此土に行はれざりし事、遠く前代の事を諭ずるにもおよぶべからず、〈その懷にせし小册子に、豐臣太閤の事をしるして、テイランにして、我法を禁ぜられし由、みえしといふ、テイランは、番語に、多く人を殺せる暴惡の人を稱するといふ、〉今代に至て、我法を禁ぜられしは、初ヲヽランド人、我敎を以て、世を亂り國を奪ふの事也と、吿申せしによれる也、此事某深く瓣ずるにもおよぶべからず、我ローマンの國ひらけしより凡
按ずるに、凡國を論ずるに、其土の小大、其方の近遠によらずといふは、達論に似たり、又國を誤るもの、其敎によらず、其人によるといふも、其言また理あるに似たり、されどまた、其敎とする所は、天主を以て、天を生じ、地を生じ、萬物を生ずる所の大君大父とす、我に父ありて愛せず、我に君ありて敬せず、猶これを不孝不忠とす、いはんやその大君大父につかふる事、其愛敬を盡さずといふ事なかるべしといふ、禮に、天子は、上帝に事ふるの禮ありて、諸侯より以下、敢て天を祀る事あらず、これ尊卑の分位、みだるべからざる所あるが故也、しかれども、臣は君を以て天とし、子は父を以て天とし、妻は夫を以て天とす、されば、君につかへて忠なる、もて天につかふる所也、父につかへて孝なる、もて天につかふる所也、夫につかへて義なる、もて天につかふる所也、三綱の常を除くの外、また天につか