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さらば、トルカの地、西北はポルトガルの地に相接し、東北は、ムスコービヤの東に至れり、〈ムスコービヤは、ゼルマアニヤの東北にありて、最遠く、タルターリヤに相近し、〉たゞ其東南海を越て、スマータラに至るまで、此國に屬すといふ事、心得られず、又其大國たる事かくのごとし、萬國坤輿圖等の諸說、此國の事に及ばず、漢譯また詳ならぬ事も、心得られず、〈按ずるに、萬國坤輿圖に、利未亞州大耳瓦タイルワ國ありて、馬爾馬利加マアルマアリキヤの地に近し、其大耳瓦、或はこれトルカの音轉じ訛れる歟、また都爾トルの字を注して、其下の字漫滅せし所あり、善本を得て、考ふべき事なる歟、〉

カアブトボネスベイ〈イタリヤの語にカアボテボネイス、フランサといひ、ヲヽランドの語に、カアポテホース、フランスとも、カアプともいふ、漢譯未詳、其地は、すなはち漢に大浪山角タランシヤンコとしるせし所也、按ずるに、萬國坤輿圖の仙勞冷祖島スエンラウレスツウタウの地に、曷叭布剌カパブラといふあり、カアプの音轉じ訛りて、仙勞冷祖島の地名とするに似たり〉アフリカ極南の地にあり、虎豹獅子禽獸之類最多し、近世ヲヽランド人、其地を倂得しといふ、〈ヲヽランド人の說をきくに、此地を倂せ得しにはあらず、此方海舶、東南洋におもむく時、必ず經過の地也、これによりて、其海口に、舶をとゞむる常所あるなりといふ、〉

マタカスカ〈漢に、麻打曷失曷マアタカスカと譯し、また仙勞冷祖島といふと見えしは、番語サンロレンソ、すなはち此也、〉アフリカ東南海中の大島也、

按ずるに、萬國坤輿圖、利未亞の地、七百州ありと注して、此方の名山大川、其大略をしるす、ローマ人、ヲヽランド人等の說く所も、此方の土俗人物等、皆詳ならず、おもふに、此方トルカの地に係りぬれば、ヱウロパ人至るものすくなくして、其事いまだ詳ならぬ歟、たゞそのカアプ、マタカスカの地、ヲヽランド人說くところは、其人禽獸にひとしといふ、〈ヲヽランド人、マタカスカに至て、其地產をとる、土人畏れ避けて相近かず、飮食の餘をすつるを見るにおよびては、またひそかに來りて竊食ふ、その癡呆なる事、かくのごとしといふ、〉

アジア諸國、

ハルシヤ〈漢に、巴爾齊亞パルツイヤア、また巴兒西パルシイと譯す、我俗にハル(シヤ)といふ、此也、〉インデヤの西、アフリカ地方の東につらなれり、モゴルの屬國也といふ、

按ずるに、此國出す所名產多し、ヲヽランド人の說に天下良馬を產ずる地、たゞ日本とハルシヤとのみ、萬國の地、およぶ所にあらずといふ、本朝慶長年間、暹羅、柬埔寨等の國、聘を通じて、しきりに馬を賜らむ事を望請ひし事あり、さらば、ヲヽランド人のいふ所、誣ずといふべし、

モゴル、〈漢に莫臥爾モヲルまたは、莫臥兒モヲルと譯す、我俗にモウルといふもの、すなはちこれ也、〉古の印度の地、地廣人稠財物豐衍の大國也、されど殊隣相