現
うつらうつら日の午をうたふ鳩時計醒めては花の散りまがひつつ
丹のはしらぬるびて諸天ねむりたまひ鼠一匹うつつに走る
近づけばすなはち消ゆる瞳(め)のおくに空をいただく花苑はあり
崕(きりぎし)のこぼれはやまず声あげてわらふ日もなき幾年なりけむ
更くる夜の大気真白き石となり石いよよ白くしてわれを死なしむ
天井も壁も日輪も透きとほりいちめんの闇に星のきらめく
神のみぎ悪魔のひだりなまなかに昼も夜も視る眼をもてあます
奈落
春まひるすでに受胎のことはてて帰命をいそぐ花むらの影