譚
涯もなき青海原に身ひとつのぬくもりを被(き)て浮きしづみすも
あを空に砕け散る日をぬすみ見てまつさかさまに娑婆に眼の醒む
けむり立つ芥焼場(あくたやきば)の日暮れ空朱(あけ)にただれて夜の闇を呼ぶ
夕まけて青むおそれを灯しつつ毒よりもにがく酔ひ痴れにけり
ひとしきり青む夜空に痴(たは)けてはおのれに似せし神を棲ましむ
寄りあひて鳴りをひそむる眼(まな)ざしに塗(まみ)れつつまた今日を恥多し
夜
脱け落ちて白桃の実の動かざるをうちまもりゐしある夜の思ひ
いちめんの壁の厚きにかこまれて醒むれば我の石よりも白き