青果
巓(いただき)の我をちいさくうづめつつ空のおもみのおしさがり来ぬ
明日をさしその翌(あけ)をさして揺れやまぬ指針の逸りをむさぼり飽かず
白珠の盞ひとつうつつなる酔はうつくし夜の夢もなく
白描
つぶらなる朱の果(み)ひとつうつつなれ瞬く間をも消えゆかむとす
毒蜂もみだりに蟄すなき天地を人と生れてそらおそろしき
研ぎあげて青むやいばの刄ざはりのしきりに冴ゆる空は見にけり
たち還る朝の険しく黙しつつくまなき霽れにさす朱(あけ)もなし
昼も夜も空の深きをかけめぐる鴉の一羽眼よりはなれず