鳥は啼け兵はたたかへ女は産めわれは天日(てんじつ)のたかきを悪む
春泥
青空に目かくしされた星があり昼の日なかを安堵はならぬ
人の世は夜あけの靄に消えゆきて囀りのこゑ花にきらめく
いつかもう人間ならぬ我になり花におぼろな影踏み歩く
根こそげの庭にひさしき夕あかりつひに命が惜まれてならぬ
夕暮れてさくら舞ひちる蔵の間(あひ)かしこにもわが悔はのこれり
この空にいかな太陽のかがやけばわが眼(め)にひらく花花あらむ
血みどろの泥に歯を剝く死のわらひ蟲けらを見れば蟲けらの世も