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   伊エ紛争

アイーダの歌ものがたりはるかにて沙漠の国は亡ぶ時に知らる


 水無月


窓による日ごとの影のうつろひのきはまるはてに翅をひらく


かの島の罌粟の実青くふる雨か往き交ふ船のけうとき無言しじま


空のをち根雪のごとくのこされて木草に凝る胚も思はず


短夜のしじま険しく山梔の酸ゆき毒にも染みかねにつつ


立雲のなかに砕けるわらひ声蟹も小蛸も憑れて走る


蟬は鳥を夜は蟬を追ひ森のなかに我が影ばかりうろつきまはる


青蛙なきてやみたる日のさかり仙人掌の痛きに触りゐる


わが弾丸たまは空にはやれど青羊歯の茂みに落つる声々もなく