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行きちがふ甲板デツキに灯もす人ふたり間の波間に僕は沈んだ


なめくぢの縞はつぶさに見えながらびもならない朝の疳癪



 新緑


暮れゆけば若葉の奥にふくみ鳴きいつそ鴉にならむと思へり


北に向く窓あまつさへ雨を呼びあの日この日の指紋を剝がせり


ゆく春のあぎとにしみる夜のしめり溲瓶の声に命ををしむ


手ばなしにはしらせてゐる機関手の片眼わらひをおれもわらつた


己がかほふと見わすれし物おそれ紫陽花の花の黄なるをにくむ


襲ひ来る青鱶鮫󠄀の双の目を匁もてつらぬくま昼まのわらひ


まざまざと白い葉並を軋ませてもろこし畠に夏は砕ける