Page:Ainu monogatari takekuma.pdf/86

　今後（こんご）の舊土人（きうどじん）敎育（けういく）を完全（くわんぜん）にし、其（そ）の成績（せいせき）を擧（あ）ぐるは緊要（きんえう）の事（こと）なりと雖（いへど）も筆者（ひつしや）の知識（ちしき）淺薄（せんぱく）にして良案（りやうあん）を見出（みいだ）す能（あた）はず。然（しか）れども筆者（ひつしや）は同種族（どうしゆぞく）たるのみならず、數年間（すうねんかん）子弟（してい）の敎育（けういく）を實地（じつち）に行（おこな）ひたれば其（そ）の結果（けつくわ）に照（て）らし、甚（はなは）だ愚劣（ぐれつ）ながら、左（さ）に意見（いけん）を開陳（かいちん）すべし。彼等（かれら）の社會狀態（しやくわいじやうたい）、並（ならび）に現在（げんざい）の敎育法（けういくはふ）を改（あらた）め、缺陷（けつかん）を補（おぎな）ひ、極力（きよくりよく）指導（しだう）せば敢（あへ）て其（そ）の目的（もくてき）を達（たつ）すること能（あた）はざるにも非（あらざ）るべし。

一般（ぱん）敎育（けういく）として

一、家庭（かてい）の惡風習（あくふうしふ）を矯正（けうせい）し、子弟（してい）敎育（けういく）に關（くわん）する注意（ちうい）を喚起（くわんき）せしむべし。

二、男子（だんし）の飮酒（いんしゆ）の常習（じやうしふ）を絕對的（ぜつたいてき）に禁（きん）ずるか又（また）は節（せつ）せしむべし。蓋（けだ）しアイヌ人口（じんこう）の漸減（ぜんげん）は、アルコール中毒（ちうどく）に因（よ）ること多（おほ）きの