然(しか)れども、土人(どじん)敎育(けういく)の効果(かうくわ)は、多大(ただい)なるものあり。其例(そのれい)を擧(あ)ぐれば、元室蘭(もとむろらん)出身(しゆつしん)の兄弟(きやうだい)二名(めい)は、師範學校(しはんがくかう)を卒業(そつげふ)し小學校(せうがくかう)敎員(けういん)(〈疾病のため死亡せり〉)となれり。又(また)長萬部(をさまんべ)村(むら)出身(しゆつしん)の江賀(えが)寅(とら)三氏(し)は高等小學校(かうとうせうがくかう)卒業(そつげふ)以來(いらい)獨學奮鬪(どくがくふんとう)の結果(けつくわ)、小學校(せうがくかう)敎員(けういん)免許狀(めんきよじやう)を得(え)て、目下(もくか)平取(ひらとり)尋常小學校(じんじやうせうがくかう)に土人(どじん)先覺者(せんかくしや)として可憐(かれん)なる同族(どうぞく)子弟(してい)を敎育(けういく)しつゝあり。以(もつ)て其(そ)の他(た)を推知(すゐち)するに足(た)るべし、
斯(かく)の如(ごと)くにして、敎育(けういく)は漸次(ぜんじ)良好(りやうかう)の狀態(じやうたい)に向(むか)へり。目下(もくか)在學(ざいがく)しつゝある兒童(じどう)の生長(せいちやう)して父母(ふぼ)となれる頃(ころ)は、其(そ)の成績(せいせき)和人(わじん)に異(こと)ならざるに至(いた)るべし。
(五)今後の敎育に就きて