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男子（だんし）の發言（はつげん）せざる中（うち）は決（けつ）して發言（はつげん）せざること、男子（だんし）に行逢（ゆきあ）ふ時（とき）は道（みち）を讓（ゆづ）ること、夫（をつと）は勿論（もちろん）、すべて男子（だんし）（下男（げなん）卽（すなは）ちウツシュは例外（れいぐわい））の名（な）を呼ばず、之（こ）れに代（か）ふるに適當（てきたう）なる語（ご）を見出（みいだ）して使用（しよう）すること、他家（たけ）を辭（じ）し出（いづ）るときは必（かなら）ず却步（あとずさり）すること等（とう）なり。

　右（みぎ）に依（よ）れば、男子（だんし）は絕對的（ぜつたいてき）權力（けんりよく）を與（あた）へられしものゝ如（ごと）しと雖（いへど）も、之（こ）れが爲め、男子（だんし）は婦女子（ふじよし）を侮蔑（ぶべつ）するが如（ごと）きこと無（な）く、殊（こと）に老婦人（らうふじん）を厚（あつ）く尊敬（そんけい）することは誠（まこと）にゆかしく思（おも）はるゝなり。

　アイヌは、他（た）地方人（ちはうじん）との關係（くわんけい）につき、子弟（してい）を敎育（けういく）するに、他（た）地方（ちはう）の人（ひと）を優遇（いうぐう）すること、之（こ）れに會（あ）ひたるときは鄭重（ていちよう）なる言語（げんご）にて挨拶（あいさつ）すべきこと、之（こ）れと共（とも）に酒宴（しゆえん）を開（ひら）き神（かみ）に祈（いのり）を捧（さゝ）ぐる儀式（ぎしき）の心得等（こゝろえとう）を以（もつ）てす。此（こ）の場合（ばあひ）に於（おい）て先方（せんぱう）の風習（ふうしふ）儀式（ぎしき）を充分（じうぶん）に知（し）るは必要（ひつえう）