「オイナカムイ」は、日高の國沙流川の小枝川「アーペツ川」の上一段と小高い山の上に「ザーシコツ」(城)を作つて住まはれたが、業卒へたので神國へお歸りになられたのである。
世界の創造並に多神敎の由來は前述の如し。故にアイヌは山へ行きて難澁する時は、山の神に、洪水其の他水難に遇ふときは川の神に、海に難船せるときは海の神に、不運なるときは木や鳥獸類の神に其の他事々に依りて拜し祈る神も同じからず、誠に繁雜なるは此の宗敎なり。此等の神を祭るに年二回位盛大なる儀式を行ふも、其の時日は人々によりて一定せず。
アイヌは此の在來の多神敎に對して、絕對的に信仰せざれば、死後靈魂迷ひて神國に入ること能はざるのみならず、其の神罰は遺