七、地方と地方、又は部落と部落との間に葛藤を生じたる時は、代表者を出し「チヤランケ」(辯論)を開きて、勝敗を決す。若しチヤランケにて決し兼ぬる場合は、隊を組み爭鬪を行ふことあり。
罪人に課する刑罰は、犯罪の性質程度によるものにて、酋長及び一般人民の意向に依りて其の輕重を定むと雖も、死罪は曾て之れを行はず。其の理由は死は人命の終りにして、刑罰にあらずと云ふにあり。
刑罰の最も重きものを、實例に依りて說明せん。沙流の「サラパ」部落の某夫婦は(〈四十年位以前〉)大罪を犯し、酋長・長老・部落民の誡をも聞かず、改悛の狀無く、相變らず罪を犯しつゝあれば、部落民は遂に之れを捕へ夫婦共、鼻・耳・踵の筋を切斷して、部落より追放したり。斯る