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「カムイウエキミムセ」は西南部せいなんぶ地方ちはう〈日高膽振〉)におこなはるゝものにして變災へんさい變死者へんししやしやうずるときおこなふ一つの儀式ぎしきなり。れを說明せつめいするに、筆者ひつしや實際じつさい目擊もくげきせし事柄ことがらもつてせん。筆者ひつしや就任しうにん部落ぶらく鵡川村むかはむらあざ「チン」としようするところなるが、大正たいしやうねん十一ぐわつ十四當部落たうぶらくぼうをとこ行衞不明ゆくゑふめいとなり、爾來じらい警察けいさつ官吏くわんりならび部落民ぶらくみん各〻おの心當こゝろあたりを搜索さうさくせるもえて見出みいだすことあたはず。つひに、惡魔あくまうばはれてきものとし、同年どうねん十二ぐわつ十七にち〈前項にて說明せるツスグルを依賴し〉死體したいかたどりつくりたるものをつて當人たうにんたく莊嚴さうごんなる葬儀さうぎおこなへり。近鄕きんがう近在きんざい村落そんらくよりしき參列さんれつすべく、たいみて續々ぞく來村らいそんせり。うちもつと多人數たにんずなりしは沙流さるごほり平賀ひらが部落民ぶらくみんにして、到着たうちやくするや、いへはひらず、そとにてたゞちに仕度したくをし、をとこかたな右手めてち、左手ゆんで