知らず。相互間に傳染蔓延せしめ、終には土人固有の疾病の如くなれるは遺憾の至りなり。されども現今の土人は、追々と衞生の必要を感じつゝあれば、當局の熱心なる指導注意によりては、改善し得られざるにあらず。隨て今日まで土人の嫌忌せらるゝ一原因たる此の衞生上の缺點も、之れを改良して和人と同等に交際を爲すを得んか。
右に說きし如く、アイヌは多く不良なる和人に接觸したれば、終に和人に對し、槪して猜疑心を抱くに至れり。されど此れ等の事は讀者諸氏の御賢察に委し、爰に深く論究するを避くべし。
只彼等の最も信じて敬ふは其の部落の小學校敎職者なり。彼等は斯の如き信念を有せり。「天下廣しと雖も眞實に味方し、最も