質(しつ)は之(こ)れに適(てき)せず、次第(しだい)に低下(ていか)の傾向(けいかう)を見(み)る。幸(さいはひ)に近年(きんねん)漸(やうや)く他人種(たじんしゆ)との接觸(せつしよく)に慣(な)れ、境遇(きやうぐう)の變化(へんくわ)に堪(た)へ、生殖力(せいしよくりよく)の稍(や)〻回復(くわいふく)せるは幾分(いくぶん)心(こゝろ)を强(つよ)ふするに足(た)るものなり。
(五)アイヌと和人との關係
⑴ 和人(わじん)より受(う)けたる影響(えいきやう)
アイヌ族(ぞく)は和人(わじん)と接觸(せつしよく)するによりて、萎縮(ゐしゆく)し、漸次(ぜんじ)減少(げんせう)の傾向(けいかう)ありしも近年(きんねん)に至(いた)りて、漸(やうや)く其(そ)の境遇(きやうぐう)の變化(へんくわ)に堪(た)へしは、前項(ぜんかう)に於(おい)て說明(せつめい)せるが如(ごと)し。
昔時(せきじ)は海岸(かいがん)地方(ちはう)要所(えうしよ)々々(〳〵)に運上屋(うんじやうや)(幕府(ばくふ)直轄(ちよくかつ)の時(とき)は會所(くわいしよ)といふ)を設(まを)け、土人(どじん)を指導(しだう)して漁業(ぎよげふ)を營(いとな)み、且(か)つ種々(しゆ〴〵)の物品(ぶつぴん)を以て土人(どじん)と