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本州（ほんしう）に蔓延（まんえん）し、人口（じんこう）多（おほ）くして勢力（せいりよく）甚（はなは）だ强（つよ）かりしかば、其（そ）の勢力（せいりよく）あるにまかせて屢〻（しば〳〵）叛亂（はんらん）を起（おこ）し、皇國（みくに）の御迷惑（ごめいわく）一方（ひとかた）ならざりき。こゝに於（おい）て日本武尊（やまとたけるのみこと）御親征（ごしんせい）あらせられ、其（そ）の後（ご）阿倍比羅夫（あべのひらふ）・坂上田村麻呂（さかのうへのたむらまろ）等（とう）の名將（めいしやう）之（こ）れを征服（せいふく）せり。一說（せつ）に據（よ）れば、北海道（ほくかいだう）の「アイヌ」は本州（ほんしう）より追（お）はれて逃（のが）れ入（い）りたるものなりと云（い）ふ。

　熟考（じゆくかう）するに、アイヌは元來（ぐわんらい）北海道（ほくかいだう）に住居（ぢうきよ）せる民族（みんぞく）なり。何故（なにゆゑ）ならば、「アイヌ」は往時（わうじ）の物語（ものがたり）を、口傳（くでん）によりて傳（つた）へつゝあるが、本州（ほんしう）に住居（ぢうきよ）せし事（こと）に就（つ）きては確實（かくじつ）なる傳說（でんせつ）なし。稀（まれ）に斯（かゝ）る說（せつ）ありと雖（いへど）も、其（そ）れは內地（ないち）より渡來（とらい）せる和人（わじん）より聞（き）きたる事柄（ことがら）に、揣摩（しま）憶測（おくそく）を加（くわ）へたるものにして、決（けつ）して信（しん）ずるに足（た）らず。其（そ）の他（た）「アイヌ」の言語（げんご）、風俗（ふうぞく）、習慣（しふくわん）等（とう）が和人（わじん）と全（まつた）く異（ことな）ること、石器時代（せききじだい）に「アイヌ」の使用（しよう）せ