ヌと稱(しよう)するを以(もつ)て、世(せ)人(じん)も亦(また)普(ふ)通(つう)アイヌと呼(よ)ぶに至(いた)れり。
「アイヌ」といふ言(こと)葉(ば)の意義(いぎ)は明(あきら)かならずと雖(いへど)も、決(けつ)して賤(いや)しき意味(いみ)を含(ふく)まず、多(おほ)くの場(ば)合(あひ)、善(よ)き意味(いみ)の方(はう)に用(もち)ゐらる。例(たと)へば「アイヌプリ」と云(い)へば、アイヌのアイヌたる作(さ)法(はふ)といふ事(こと)に正(たゞ)しき善(よ)き作(さ)法(はふ)の意味(いみ)を以(もつ)て解釋(かいしやく)せらる。
(二) アイヌの住居地
「アイヌ」には、元(ぐわん)來(らい)文字(もじ)なく、從(したが)つて往(わう)時(じ)の記(き)錄(ろく)なければ、其(そ)の歷(れき)史(し)を知(し)ること難(かた)し。
「アイヌ」の住居(ぢうきよ)する地(ち)は、現今(げんこん)北海道(ほくかいだう)本島(ほんたう)、千(ち)島(しま)列島(れつたう)及(およ)び樺太(かばふと)に過(す)ぎずと雖(いへど)も、日(に)本(ほん)歷(れき)史(し)の記(しる)す所(ところ)に據(よ)れば、往(わう)古(こ)は蝦夷(えぞ)と稱(しよう)して日(に)本(ほん)