アイヌ物語を讀みて所感と希望とを陳ぶ
河 野 常 吉
武隈德三郞(たけくまとくさぶらう)氏(し)著(あら)はす所(ところ)のアイヌ物語(ものがたり)成(な)りて、序(じよ)を予(よ)に求(もと)めらる。されど予(よ)は普(ふ)通(つう)に於(お)けるが如(ごと)く形式的(けいしきてき)に序(じよ)を書(か)くを好(この)まず。聊(いさゝ)か所感(しよかん)と希(き)望(ばう)とを述(の)べて、序(じよ)に換(か)へんと欲(ほつ)す。
予(よ)は先(さき)に、武隈(たけくま)氏(し)と面識(めんしき)ありて、旣(すで)に其(その)履(り)歷(れき)を知(し)