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たりしに拘はらず、困苦を忍び、艱難に耐へ、毅然として奴隸廢止の正義を守りて、北部の味方たりしは、眞に美麗なる人情の發動と謂ふべき也。此の令發布の當時、リンコン謂へらく、今背叛の狀に在る南部諸州の奴隸を解放して、全く自由の民と爲さば、政府が戰を繼續するの意は、唯奴隸廢止の一事に在るべき事明白なるべきが故に、自由を愛する人民の外國政府をして、全く于涉の餘地なきに至らしむべしと。――然り、結果は明に之を證明せり。

 リンコンが智力の進步、德性の開展、人を引きつける人格の發達は、五十二歲に至りて、彼が政治の大任を帶びたる時、如何に人智の驚異すべくして、また万事に適應する性質を