彼が第一回の就任演說の當時に在りては、吾人は未だ一滴の鮮血を見ることなかりし也。彼は此の演說に於て、分離せる諸州に示すに、力めて溫和の態度を以てしたると共に、憲法を保障し、彼を選擧して、黨派の決議を實行することも、亦彼が正しき職務なることを詳陳せり。其の所謂決議の中に曰く『州權の犯すべからざることを認むる事、特に各州に對して任意に州內の事件を處埋するの權を認むる事は、實に我政治組織に必要なる權力の均衡を維持する所以也。』彼は幾度か此の語を反復したる後、語をついて曰く『憲法及び法律の範圍に於て、諸州に附與し得べき保護にして、諸州より要求することあらば、之を一州に與ふること、猶ほ他の州