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に忍ぶこと能はざりき。されば當時の陸軍當事者は、逃走兵士を取締るに途なきことをつぶやけり。罪人の家族の婦人にして謁を求むるあらば、彼は必ず之を引見せり。戰爭の爲に苦みたる者の親戚姻者に對する彼が同情の濃なることを示す例證の多きが中に、總ての男兒を送りて戰塲の鬼たらしめし母人に贈りたる彼が弔慰狀の如きは、眞に親切丁寧を極めたるものゝ一と謂ふべし。書中に曰く、『余は陸軍省の記錄に於て、貴下が五人の子息の悉く名譽の戰死を遂げられしを知れり。余は何の辭を以て貴下が無窮の哀を慰め申すべきやを知らざれども、共和國を救はんが爲に斃れたる人の死に對して、共和國の感謝として、玆に弔慰狀を發せざら