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余が彼の少時について特に微細に亘る所以のものは、如何に奇異なる土臺の上に、彼の光榮と事業とが築かれたるかを示さん爲なり。運命は彼を小學に送らず、中學に送らず大學に送らずして、彼を流離困頓の中に投じて、來るべき大任を負はしむべき準備たらしめたり。而も此の準備や、實に一髮千鈞の危機に際して、最大緊要のものたるを證明せり。天若し彼を小中大學に在ること十年ならしめば、彼恐らくは彼が負ひたる如き唯一無二の大任に堪へざりしならん。想ふに彼以外のモーセスありて、我等をヨルダンの彼方なる望める自由の鄕に導きたらん。