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カール・シュルツ氏の『リンコン論』と爲す。シュルツは「四十八年」の革命に敗れて獨逸より米國に逃れたる人也。南北戰爭の當時、已に理想主義政治家として其の名高く、リンコンの批評家、助言者として亦甚だ重きをなせり。後大統領ヘースの內閣に入りて內務卿となりしことあり、外來の移民にして台閣に上る、其の人誠に異數とすべし。所謂猩々猩々を識る。その『リンコン論』の、傳記文學の領域に於て一生面を開くもの、固より怪しむに足らざる也。而かも一讀直に要を得んとするには紙數幾百、シュルツの書も亦多少の憾なきにあらず。(Abraham Lincoln: An Essay. Boston. 1891).

 今此の憾を銷すべくして直截簡明、僅々數十頁の間にリンコンを活躍せしむるものは、ジョーセフ・チョート氏の『リンコンの事業及び其の人物』にして、本書は即ち其の譯本也。(The Career and Character of Abraham Lincoln: By Joseph H. Choate. N.Y. 1901).

 本書の著者ジョーセフ・エッチ・チョート氏は、ハーヴァド大學出身の法律家にして、今猶ほ米國法曹界の巨人として雷名あり。千八百九十九年より四ケ