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自序
 

 而して斯る情󠄁勢下にある原價計算の必要󠄁と、その內容を正しく理解させ、且つ認󠄁識させるため原價計算に關する一般理論と其の實際に就て執筆しつゝあつた處、企畫院から本年八月十七日に至り、「製造󠄁工業原價計算要󠄁綱」が發表されたので、一段とその必要󠄁を痛感し、この要󠄁綱に基礎を置き換へ執筆を急󠄁いだのである。公私多端の折とて內容に就き十分推敲するの機會を得なかつたので、或は無益󠄁の寄與に終󠄁りはしないかといふことを惧れて居る。不備不滿の點に就ては今後の硏究を基礎として除々ママに訂正して行きたい。

 尙本書は私自らの意見で、委員としての見解ではないことを御斷りして置きたい。

昭和十六年九月

早稻田大學商學部硏究室

長谷川安兵衞識