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が如きは何等意に介しない處であつた。

第二節󠄁 原價計算の國家的性格

 原價計算の性格は近󠄁時一變した。それは營利意識の原價計算から、國家意識の原價計算への轉換である。この國家意識に立つ原價計算こそ我產業に對し國家が要󠄁請󠄁する原價計算的性格である。

 御承知の如く高度國防國家建󠄁設を目指す新體制は着々と實行に移されつゝある。而して高度國防國家建󠄁設に於ては生產第一主義が、その目標である。我國は何を措いても現在生產性を昻揚せねばならぬ立場にある。然し營利意識を以て無條件に生產力を增强し得る條件は欠けて居る。卽ち資󠄁材も益󠄁々窮乏しつゝある。資󠄁本も不足勝󠄁である、人的資󠄁源も足りない狀態にある。斯る情󠄁勢に於て果して生產性が昻揚出來得るか? その疑念に答ふるには經營合理化󠄁によるべしと云ひたい。最早經營合理化󠄁による經營指導󠄁以外に手はない。それが實現出來るか否かは一つに產業人が寸𨻶なき國策協力を成し遂󠄂げ得るや否やに懸る。產業人の使命も責任もまた大きい。我々は、それを切實に期待するのである。

第一章 總論